モンゴル研究会

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会報『ツェツェック ノーリン ドゴイラン ЦЭЦЭГ НУУРЫН ДУГУЙЛАН』№4

 会報『ツェツェックノーリンドゴイラン』第4号では、日本、モンゴルの環境汚染、放射能についての三上喜美男さんの文章、「福島で、そしてモンゴルで」(出典:2013年9月8日付『神戸新聞』朝刊)を紹介します。三上喜美男さんは、1976年、大阪外国語大学モンゴル語科入学、1981年、神戸新聞社に入社し、社会部、阪神総局、姫路支社、文化生活部などで勤務。その後、論説委員、文化生活部長を経て現在、論説副委員長として活躍されています。


福島で、そしてモンゴルで

三上喜美男

 栃木県と群馬県を流れる渡良瀬川の場合は、泳げなくなったアユだった。
  子どもでも手でつかめるほど動きが鈍くなり、やがて白い腹を見せて浮いた。銅山の鉱毒がもたらした環境汚染である。
  熊本県の水俣では、踊るように身もだえする猫だった。
  化学工場が海に排出したメチル水銀は魚類に蓄積し、それを食べた猫の神経を冒した。
  足尾銅山鉱毒事件も、水俣病も、汚染の兆候はまず、生き物に現れた。地元住民に重大な健康被害が確認されたのは、それから後のことだ。
  同じような問題が、遊牧の国モンゴルでも起きていると知った。大草原の草を食んで育つヒツジやヤギ、牛などの体内に異変がみられるというのだ。
  牧民は飼育した家畜を自らの手でさばく。近年、死んだ家畜の肝臓や肺、胃に腫れものが目立つようになった。白や黒の斑点が見つかった例もある。
  それだけではない。異常な出産が増えた。頭が二つの子ヒツジや自分の足で立てない子ラクダ…。その多くにも内臓の変異がみられたそうだ。
  モンゴル国東南部、中国と国境を接するドルノゴビ県。そこで牧民たちが経験したことのない「何か」が進行している。
  2年前までの約半年間、現地の草原でウラン鉱の試験採掘が行われた。手掛けたのはフランスの原子力企業アレバ社が出資する会社。地中に化学物質の水溶液を注入し、溶けたウランを吸い上げる方式だった。
  大量の残土が囲いもなされず今も放置されている。放牧された家畜は自由に近づく。牧民たちは放射性物質の影響を疑い、因果関係を否定する政府への憤りを強めているという。
  その状況を大阪大学の今岡良子准教授らが先日、大阪市内で報告した。「福島と心を一つにしたい」という現地の人たちの言葉も紹介された。
  放射能から自然を、命を守れ。そうした声が今、世界各地で上がっている。草原とこの島国は同じ糸でつながっている。


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